2012年6月27日水曜日

カポウさんソロアルバム「33」の3 ミックス編

すべての楽器や歌が録り終わりました。
これからが、それぞれの音をトリートメントし、かつバランスを調整するという地道な作業「ミックスダウン」であります。ましてや今回は電子楽器ではなく、人間のグルーブ・ダイナミクスがむき出しの全編アコースティック楽器。ピャー

当初、私はそれぞれの音の輪郭をカリッとさせて音圧高め、ドライでリバーブ少なめできっちりかっちりと作り上げる感じのミックスで進めていました。
数曲、そのスタイルでの仮ミックスを聴いていただいたところ、「ちょっとコンプやリミッターかかりすぎかも」という感想。むぅ、確かにこの楽曲や演奏の良さを活かすのは音圧よりも空気感。いや本当の理想は空気感を持たせつつ、音圧もしっかりと稼ぐことなのだけど、私にはその技術が無~い(涙)。
そこでカポウさん立ち会いの下、コンプを外し、あるいは極力薄くし、バランスと空気感を重点にミックスを進め「この方向性がイイね!」ということを確認して、その後を進めることが出来ました。
(地味な作業なり)
ひとつひとつの楽器や音に対しては自分なりに愛情を込めて楽器毎に各周波数を薄く持ち上げ薄く削り、各楽器を分離させ、かつカポウさんの歌を引き立たせるミックスを進めたつもり。
音をひとつひとつバラバラに立ち上げてマイクプリを通し直したり弦楽器のアタックを抑えたり色々なことしながら整えていきました。その中ではノコギリが難しかった!あの豊かで何とも言えない音。そしてマイク4本のウッドベース!
(4本のマイクあるの分かります?)
何を活かし何を削るか…。うーんミックスって哲学的!

しかしこんなにコンプやリミッターを使わなかったのは初めて!「空気感と音の良さはバッチリ、でも音圧は低めですボリューム上げて聴いて下され」という仕上がりになったと思われるっ。

ミックスが9割程度仕上がったところで再度カポウさんに立ち会ってもらい、各楽器のバランスや空気感の細かな修正を入れていきました。その段階でサキタハヂメさんからの音が届き、「またあした」に加えて聴き、はぁ~うっとり!
曲順が決まり最終マスタリングも済ませ、無事にマスターCDをカポウさんに渡せた時(納期ギリギリでしたが汗)は思わず握手。

いやはや、いかに自分が未熟かということが思い知らされたレコーディングでした。こんな私のエンジニアリングやミックスにお付き合いいただいたプレイヤーの方々、そしてカポウさんに感謝。

レコーディングスタジオやエンジニアって「プレイヤーの人がストレスなく気持ち良く演奏に集中できる環境を整え続けること」ということが当たり前の大きな役割だということを再認識させられました。これからも、技術はまだ未熟だけどそのことを意識してお手伝いがしたいと思う次第。

完成した作品、是非聴いて欲しいなぁー。

2012年6月26日火曜日

カポウさんソロアルバム「33」の2 うたとノコギリ編

楽器隊の録音は終わり、あとはカポウさんの歌とノコギリを録るだけとなりました。

私が惚れた歌声を録らせていただけるってこんな幸せなことはない、なんて書くと変態っぽい?!けど、幸せなことは幸せなのだ!

カポウさんは、素晴らしいプレイヤーの方々の音と歌うことを心の底から喜び、楽しんでいることがブース越しからも良ーく伝わるレコーディングでした。まさに「音楽」。
レコーディング自体は、ライブを数多く行っているカポウさんならではの録音なり。数テイクでOKテイク、そしてあの質感。完成したCDで味わっていただきたい!
(musical sawを弾くカポウさん)
そしてノコギリ(musical saw)!当然録音初体験。バイオリンのようにボウ(弓)でこすって音を出すのだけど、この擦る音をなるべく拾わないようにしつつ、豊かな倍音を拾うマイキングがとーっても難しいのだ!

録っては聴き、いやこうじゃない、マイクの種類や位置を変えて録っては聴きの繰り返し。マイクを壁に向けたり上に向けたり下に向けたり左右上下東西南北。
参考にと聴かせていただいたサキタハヂメさんの音を聴き、「こ、これはどのように録っているんだべか?」ああ、サキタハヂメさんの録音方法を盗みに行きたいです、こっそり。
これは今後、是非リベンジしたい音でありまする。

そしてコーラスはcurly girlyのReeさんと、かせのまさよさん。今までの楽器隊が男子的楽団であったので、女子力満載なレコーディングは華やかでそれはそれで大変よろしい。いつもよりテンションが高いと指摘もあり。。。で、私もなぜかコーラスとクラップでちゃっかりと参加…。

ようやく長かったレコーディングもこれにて終了~。
ミックスという地道な作業が私を待ちかまえているのだー。
(その3へつづく)

2012年6月25日月曜日

カポウさんソロアルバム「33」の1 楽器隊編

実は久しぶりに怒濤のレコーディングエンジニアしていたのですよ。

昨年知り合ったセイノユカさん企画のライブでキッコリーズを初めて聴き、CDも購入しすっかり魅了されて、無謀にも「録音させてもらえないか」と声を掛けたところ、ボーカルで「シンガーソングノコギリスト」のカポウさんが自分のソロアルバム制作の構想があるのでタイミング良く是非!ということに相成ったわけです。

フタを開けてみるとプレイヤー陣がすごく豪華でびっくり!
まずはウクレレで富永寛之さん、ギターに古舘賢治さんという布陣で一発録り。冬の札幌に太陽のようなオーラで「ばばばーん」と登場した富永さん。そして古舘さんは優しい旅人風情。そんなスゴイ人達が来るとは思っていなかったびびりワタクシ。

いきなり慣れないアコースティック楽器の録音で、じっとりと大汗をかきながら右往左往と準備する私を尻目に一流プレイヤーの方々はサラリとスタンバイして優しく見守っているスタジオ内。
小さなウクレレ大きな手で繊細超絶テクニックの富永さん、「カルロス!グッジョブ!」と叫びたくなるソンブレロが似合う古舘さん、この二人の組合せ、今回のレコーディングが初顔合わせと聞いてびっくり。演奏はヒジョーにタイヘンに素ん晴らしく、エンジニアしながらもうっとりと聴き入り役得役得とほくそえむ録音。どんどん録っていけるのだ。一日8曲とか!ピャー
この現場に立ち会えたことは私の財産であります。完成した音はCDで是非ゼヒ!
(富永さん、カポウさん、古舘さん)
続いて日を改めての録音は、ベースのボブさんとウクレレの富永さん、そしてバイオリンの鈴木裕さん。
実はウッドベースを録るのはこれが初めてで、どこに何のマイクを立てて録ったら良いのやら分からなかったので4本のマイク、ノイマンU87とシュアーSM57×2本、そしてAKGのチューブマイクを立てて録りって自分の持っているマイクすべてだったりする。ミックスダウンの時、自分で自分の首を絞めるような行為。はい、後で死にました。そしてボブさんの「うっふん、ふんふん」という演奏中の熱い吐息もしっかりとマイクでキャッチしておりまして、それが絶妙な調味料として味わい深いグルーブを醸し出しております。
バイオリンの裕さんはレコーディングの時も当然半袖Tシャツでありまして、パチクリしながらスラ~ッと美しい旋律を紡ぎます。マイキングが楽というか、ただヒョイとマイクを立てたら「あら美しい音が」的なノリで録れるのです。
(裕さん、ボブさん、富永さん、カポウさん)
ンもう、とにかくどのプレイヤーの人も演奏が素晴らしく、愛に溢れ、優しいグルーブでどんどん録れる録れる!ピャー

楽器隊の最後のトドメは「にゃ~」と登場したスティールパンとパーカッションの山村誠一さん。スティールパン録るのも初めてですよ。ダイナミクス広いです北海道並みに広いです。マイクは上と下で狙うのですね、ハァー豊かな倍音ですね、と感心してばかりでありました。
山村さん、やおら大きな荷物の中から取り出したるは「ちんどん」!そう、チンドン屋のそれ。タイコと鐘の音量差が意外とあって録るの難しいですよ、なので太鼓はショットガンマイクで狙った方が良いかもー、と試したいけど時間も限られておりますよ、と忙しい録音。またも大汗の私。
リズム隊を最後にオーバーダビングするという常識の反対をこなした山村さんは偉大としか言いようがなく、完成した作品を聴くと、まるで「せーの」で一発録音したかの如くぴったりと合っておりマス。
(山村さん、カポウさん)
このレコーディングを通じて、アコースティックの3~4人編成一発録りが出来る環境を整えたいなーと思いました。モニター環境と音の分離環境を少し整えれば出来そうな予感。あとはマイクを少々足さないと。アコースティック楽器はやっぱり本当に良いわー。

素晴らしいプレイヤーの人達、最後は「あとはよろしく~ゴッドハンド!」とか私のことを褒めておだてて爽やかに帰っていきます。意味は分からなくてよろしい。

残るはボーカルとノコギリを録るんです。いよいよ。
(その2へつづく)
ミックスダウンもこれまた初体験なことばかりで。
(その3へつづく予定)